前回に続き、「パワハラ指針」の内容を見ていきます。
指針は、パワハラにあたる代表的な言動の類型を挙げています。以下のイからヘまでです。
イ 身体的な攻撃(暴行・傷害)
ロ 精神的な攻撃(脅迫・名誉棄損・侮辱・ひどい暴言)
ハ 人間関係からの切り離し(隔離・仲間外し・無視)
ニ 過大な要求(業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制・仕事の妨害)
ホ 過小な要求(業務上の合理性なく能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと)
ヘ 個の侵害(私的なことに過度に立ち入ること)
指針は、このように代表的な言動を類型化するだけでなく、イからヘまでのそれぞれについて「該当すると考えられる例」と「該当しないと考えられる例」も挙げています。たとえば「業務の繁忙期に、業務上の必要性から、当該業務の担当者に通常時よりも一定程度多い業務の処理を任せること」は「ニ 過大な要求」には当たらないとしています。
続いて、事業主が雇用管理上講ずべき措置の内容については、以下の(1)から(4)に分類して記述しています
(1)事業主の方針等の明確化及びその周知・啓発
(2)相談(苦情を含む)に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
(3)職場におけるパワーハラスメントに係る事後の迅速かつ適切な対応
(4)(1)から(3)までの措置と併せて講ずべき措置
詳しくは指針そのものに書かれていますが、事業主としては、就業規則への定め、相談窓口の設置などを行う必要があります。厚生労働省都道府県労働局雇用環境・均等部(室)発行のパンフレット「職場におけるパワーハラスメント対策が事業主の義務になりました!」には「対応例」が具体的に示されていますので、これらを参照して体制整備に取り組むとよいでしょう。指針やパンフレットはウェブ上で公開されています。 労働施策総合推進法の改正は既に順次施行されていますが、この措置義務の部分については経過措置が設けられています。中小事業主は令和4年3月31日までは努力義務にとどめられ、翌4月1日から対象となります。本稿をご覧になった事業主の方々は、指針に沿った体制整備がなされているかどうか、再度ご確認ください。
(弁護士 軽部 龍太郎)